今月の税務情報は、「土地等の譲り受けの際の源泉徴収」についてご案内します。
■ 非居住者等に対する源泉徴収
非居住者等に対して国内源泉所得に該当する一定の支払いを行う場合には、その支払者に対して源泉徴収義務が課されています。
対象となる支払いには、いろいろなものがありますが、ここでは土地等の譲渡対価の支払いについて確認していきます。
なお、以下の内容は日本の国内法の規定ですから、租税条約でこれと異なる規定を置いている場合には、その規定によることになります。
■ 対象取引
非居住者等が日本国内にある土地等を譲渡した場合が対象となります。土地等とは、土地、土地の上に存する権利、建物とその附属設備、構築物をいいます。
鉱業権、温泉利用権、借家権などは土地等には含まれません。
■ 源泉徴収義務者
非居住者等に対して、土地等の譲渡対価の支払いをする者が源泉徴収義務者となります。
土地等の譲渡対価の支払いをする者が法人の場合はもちろん、個人の場合にも対象となります。
また、給与等の源泉徴収義務者となっているかどうかは無関係ですから、サラリーマンや主婦であっても、源泉徴収義務者となりますので注意する必要があります。
■ 源泉徴収税額と納付
源泉徴収税額は、土地等の譲渡対価の10%となります。
なお、譲渡対価の額の中に消費税等が含まれている場合には、消費税等を含めた金額が源泉徴収の対象となりますが、契約書等で譲渡対価の額と消費税等の額が明確に区分されているときは、譲渡対価の額のみを源泉徴収の対象として差し支えないこととされています。
源泉徴収した所得税は、原則として徴収した日の属する月の翌月10日までに、「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書(納付書)」を添えて金融機関等で納付する必要があります。
■ 非居住者等
この源泉徴収の対象となる非居住者等とは、非居住者(国内に住所を有しない個人で国内に引き続き1年以上居所を有しない者)と外国法人(国内に本店や主たる事務所を有しない法人)です。したがって、日本人であっても、1年以上の予定で海外出向等となっている人は非居住者に該当しますので、源泉徴収の対象となります。
ただし、国内に居住する外国の大使や外交官である大使館・公使館職員については、人的非課税に該当しますので、源泉徴収の対象にはなりません。
■ 源泉徴収を要しない場合
土地等の譲渡対価が1億円以下で、その土地等を個人が自己またはその親族の居住の用に供するために譲り受けたものである場合には、源泉徴収は不要とされています。
この規定は、個人に限定されていますので、譲り受けの相手方が法人である場合には、たとえ法人の社員等の居住の用に供するものであったとしても適用されません。