今月の税務情報は、「海外赴任前後の源泉徴収」についてご案内します。
■ 非居住者となる場合
日本人が、海外に居住することとなった場合に、「その人が国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する」ときは、非居住者と推定されることになっています。したがって、海外赴任の場合、赴任期間が1年以上予定されているときは、出国の翌日から非居住者となります。
海外赴任する社員が、非居住者となる場合には、海外赴任直後の給与や賞与の支払いの際の源泉徴収について、また、非居住者が海外赴任から帰国して居住者となった直後の給与や賞与の支払いの際の源泉徴収について、注意する必要があります。
■ 海外赴任直後の給与
非居住者に対して国内源泉所得である給与を支払う際には、20%の税率による源泉徴収が必要です。したがって、海外赴任等により非居住者となった人に支払われる給与で、非居住者となった日以後に支給日が到来するものについては、国内勤務期間に対応する部分について、非居住者に支払う国内源泉所得として20%の税率による源泉徴収を行うことになります。
しかしながら、その計算期問が1ヶ月以下であるものについては、その全額が国内勤務に対応するものでない限り、国内源泉所得に該当しないものとして取り扱うことができるため、源泉徴収は不要となります。
■ 海外赴任直後の賞与
賞与計算期問の途中で、海外赴任等によって非居住者となった人に支払われる賞与(計算期問が1ヶ月を超えるもの)で、非居住者となった日以後に支給日が到来するものについては、原則どおり、国内勤務期間に対応する部分について、非居住者に支払う国内源泉所得として20%の税率による源泉徴収が必要となります。
なお、国内勤務期間に対応する部分の金額は、賞与の総額に、賞与の計算期間に占める国内勤務期間の割合を乗じて計算します。
■ 帰国直後の給与・賞与
給与(賞与)計算期問の途中で、海外赴任等から帰国して、非居住者から居住者となった人に支払われる給与や賞与で、帰国日以後に支給日が到来するものについては、たとえ計算期間の中に、国外勤務期間に対応する部分が含まれているとしても、全額が居住者に支払う給与、賞与とされますので、その全額について通常どおりの源泉徴収が必要となります。
■ 出国時の年末調整
年の中途で非居住者となる場合には、その時点で年末調整をしなければなりません。年末調整の対象となる給与は、その年の1月1日から海外赴任(出国)する日までの給与・賞与となります。
年末調整の際、社会保険料控除や生命保険料控除等については、海外赴任(出国)する日までに給与から控除されたものや支払ったものに限られます。
一方、配偶者控除や扶養控除等については、海外赴任(出国)する日の状況に応じて控除対象配偶者や扶養親族に該当する場合には、全額を控除することができます。