今月の税務情報は、「海外赴任者の不動産所得」についてご案内します。
■ 海外赴任者の確定申告義務
年の中途で海外赴任によって非居住者になった社員については、その年の1月1日から出国する日までの間に生じたすべての所得と、出国した日の翌日から、その年12月31日までの問に生じた国内源泉所得を合計して、確定申告をする必要があります。
給与所得のみの場合には、年末調整の対象となるため確定申告は不要ですが、たとえば国内にある不動産の賃貸による所得(不動産所得)については、国内源泉所得に該当することになりますので、確定申告の対象となります。
この場合の確定申告については、その時期等に注意する必要があります。
■ 納税管理人の届出書を提出した場合
年の中途で海外赴任によって非居住者となった人に、不動産所得等がある場合、出国の時までに納税管理人の届出書を提出したときは、その年の翌年2月16日から3月15日までの問に、納税管理人を通して確定申告をすることになります。
納税管理人とは、非居住者に代わって確定申告書の提出や税金の納付等、納税義務を果たす人で、個人だけでなく法人でも構いませんので、会社が納税管理人となることも可能です。
納税管理人を定めたときは、その非居住者の納税地を所轄する税務署長に「所得税の納税管理人の届出書」を提出する必要があります。
なお、確定申告書は納税管理人の住所地(所在地)ではなく、非居住者本人の納税地を所轄する税務署長に提出します。
■ 納税管理人の届出書を提出しなかった場合
出国の時までに納税管理人の届出書を提出しなかった場合の確定申告については、まずその年の1月1日から出国する日までの間に生じた所得について、その出国の時までに確定申告(準確定申告)をする必要があります。
そして、その年の1月1日から出国する日までの間に生じたすべての所得及び、出国した日の翌日からその年の12月31日までの間に生じた国内源泉所得について、翌年の2月16日から3月15日までの間に、確定申告をしなければなりません。
この確定申告による納付税額は、その確定申告書で計算された納付税額から、先に行った確定申告(準確定申告)で計算された納付税額を差し引いた金額となり、先に行った確定申告(準確定申告)で計算された納付税額の方が多くなる場合には、その差額が還付されます。
■ 会社が社宅として借上げた場合
非居住者が、国内にある不動産を個人に対して居住用として賃貸している場合には、賃借人に源泉徴収義務はありません。
ただし、法人に対して賃貸している場合には、賃借人である法人に源泉徴収義務が発生します。賃借人である法人は、賃借料の支払いの際、20%の税率によって源泉徴収し、翌月10日までに納付しなければなりません。
したがって、会社が海外赴任した社員の自宅を、社宅として借上げて賃借料を支払う場合には、会社がその自宅を社宅として他の社員に貸し付けていたとしても、源泉徴収義務がありますので注意が必要です。