今月の税務情報は、「出向者に対する給与」についてご案内します。
■ 出向者に対する給与・賞与
出向が行われた場合、出向者に対する給与・賞与の支払いは、出向先法人から行われる場合と引き続き出向元法人から行われる場合があります。
労務の提供は、出向先法人に対して行われているため、本来的には出向先法人が提供された労務の対価たる給与を支払うべきですが、通常、出向期間経過後は、出向元法人へ復帰することとなるため、出向元法人が引き続き給与の支払いを行う場合も多くなっています。
■ 税務上の取扱い
税務上は、出向先法人が出向者に対して直接給与・賞与の支払いを行う場合だけでなく、出向元法人が出向者に対する給与を支払っているため、出向先法人が直接支払うべきである労務の対価としての給与相当額を、給与負担金として出向元法人へ支出した場合、その実質に着目し、出向者に対する給与として取り扱うこととしています。
その場合、必ずしも給与負担金の名称を使用しないで、経営指導料等の名称であっても、実質的に給与負担金の性質を有していれば、同様に取り扱われます。
なお、出向者が出向先法人において取締役に就任している場合には、出向先法人の支出した給与負担金は、役員に対する給与として取り扱われるため注意する必要があります。
■ 較差補てん
出向者に対する給与は、本来、労務の提供を受けている出向先法人が全額負担することが原則ですが、出向者と出向元法人との雇用契約は、出向期間中であっても依然として維持されているという点から、出向による賃金水準の低下(労働条件の低下)は労働法上の問題もあるため、出向元法人と出向先法人との給与条件の較差の補てんが行われることがあります。
このため、税務上も給与条件の較差を補てんするため出向元法人が負担する額については、出向元法人において損金の額への算入を認めています。
また、出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため出向元法人がその出向者に対して支給する賞与の額、出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額についても、給与条件の較差を補てんするために支給したものとされています。
■ 給与の額を超える金額は
出向先法人が負担する労務の対価としての給与相当額については、その実質に着目し、経営指導料等の名称を用いていても、出向者に対する給与として取り扱われますが、給与相当額を超えた部分は給与負担金としての性格はないこととなります。
したがって、給与相当額を超えた部分については、労務の提供以外に出向元法人から出向先法人に村する経営指導等の特別の役務の提供が行われており、その対価として相当である場合を除いて、特に合理的な理由が認められない場合には、出向元法人に対する寄附金となると考えられます。