今回の税務情報は、「給与増加分の4割を税額控除!?新しい賃上げ促進税制」についてご案内します。
令和4年度税制改正では、中小企業向け・大企業向け双方の給与に関する優遇税制(以下、賃上げ促進税制)が改正されています。特に中小企業向けでは、今回の改正により最大で給与増加分の4割を、税額控除できるようになりました。両者の改正後の概要を確認していきます。
■ 中小企業向け
中小企業向けの賃上げ促進税制とは、青色申告書を提出する一定の中小企業者等が、給与総額を一定割合増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税。以下同じ)から税額控除できる制度です。
【令和4年度税制改正の改正内容】
教育訓練費の要件から認定経営力向上計画における経営力向上の証明を廃止するなど、控除率の上乗せ要件を見直した他、賃上げと教育訓練費それぞれに上乗せの控除率を設けて控除率を最大40%まで引き上げた上で、適用期限が1年間延長されました。 |
■ 中小企業向け 賃上げ促進税制の概要(令和4年度税制改正適用後)
中小企業向け「賃上げ促進税制」 |
【適用要件】 |
雇用者全体の給与総額 :
対前年度増加率1.5%以上 |
【税額控除】 |
控除率最大40% |
■ 控除率を乗ずる対象 |
雇用者全体の給与総額の対前年度増加額
(雇用安定助成金額を除いた増加額が上限) |
■
控
除
率 |
基本 |
15% |
上
乗
せ |
賃上げ |
+15% |
雇用者全体の給与総額 :
対前年度増加率2.5%以上 |
教育訓練費 |
+10% |
教育訓練費※1の対前年度増加率10%以上 |
■ 控除上限額 |
当期の法人税額×20% |
(※1) 教育訓練費の明細書の保存が必要
なお、令和4年(2022年)4月1日以後開始事業年度(個人事業主は令和5年分)から適用されます。適用時期にご注意ください。
■ 大企業向け
大企業向けの賃上げ促進税制とは、青色申告書を提出する企業が、継続雇用者の給与総額を一定割合増加させた等の要件を満たした場合に、雇用者全体の給与増加額の一部を法人税から税額控除できる制度です。
【令和4年度税制改正の改正内容】
新規雇用者が対象の人材確保等促進税制から改組。適用要件を、前事業年度及び適用事業年度のすべての月分の給与等の支給を受けた雇用保険一般被保険者等(継続雇用者)とするなど内容を大幅に見直し、控除率を最大30%とした上で、2年間の時限措置として設けられました。 |
■ 大企業向け 賃上げ促進税制の概要(令和4年度税制改正適用後)
大企業向け「賃上げ促進税制」 |
【適用要件】 |
継続雇用者の給与総額 : 対前年度増加率3%以上
+ 従業員への還元や取引先への配慮を
行うことを宣言していること※1 |
【税額控除】 |
控除率最大30% |
■ 控除率を乗ずる対象 |
雇用者全体の給与総額の対前年度増加額
(雇用安定助成金額を除いた増加額が上限) |
■
控
除
率 |
基本 |
15% |
上
乗
せ |
賃上げ |
+10% |
雇用者全体の給与総額 :
対前年度増加率4%以上 |
教育訓練費 |
+5% |
教育訓練費※2の対前年度増加率20%以上 |
■ 控除上限額 |
当期の法人税額×20% |
(※1) 資本金10億円以上、かつ常時使用従業員数1,000人以上の企業への要件
自社のウェブサイトに宣言内容を公表したことを経済産業大臣に届出
(※2) 教育訓練費の明細書の保存が必要
なお、令和4年(2022年)4月1日以後開始事業年度(個人事業主は令和5年分)から適用されます。適用時期にご注意ください。
【参考】
財務省「令和4年度税制改正」
中小企業庁「中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック」
経済産業省「大企業向け賃上げ税制ご利用ガイドブック」 他 |